東京高等裁判所 昭和32年(ネ)2197号 判決
まず第一に、条例の無効確認の訴の適否について考えるに、わが現行の制度の下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所は、かような具体的事件を離れて抽象的に法律命令などの法規の効力を判断することができないものである(昭和二七年(マ)第二三号、同年十月八日最高裁判所判決参照)。しかして、条例は、地方公共団体がその自治権に基いて定立する法規の形式を有するもので、条例がその制定公布によつて特定人に対し直接現実に法律効果を及ぼし、その点において行政処分による場合と異ならないような場合には、その者は、あるいは右条例の取消ないし無効確認を求めることができるかも知れないのであるけれども、そのような場合を除き裁判所は抽象的にその効力につき判断することができないものである。本件において控訴人らの主張する新潟県岩船郡山北村役場の位置を定める条例が控訴人らに対し直接現実に法律効果を及ぼすものでないことは、その内容自体によつて明らかであるから、右条例の無効確認を求める控訴人らの本訴は、結局抽象的に右条例の効力につき判断を求めることに帰し、不適法であつて許されないものというべきであり、このことは右条例が住民の権利義務に関しない事項について制定せられる行政規則の性質を有するものであつても何らかかわりないものというべきである。よつて控訴人らの右訴は不適法として却下すべきである。
次に、被控訴人議会の議決の無効なることの確認を求める控訴人らの訴の適否について考えるに、地方公共団体の議会の議決は、地方公共団体の内部的意思決定に過ぎないから、行政事件訴訟特例法第一条にいう行政庁の処分ないしはその他の公法上の権利関係ということはできない。従つて地方自治法第百七十六条第五項のように特に訴の提起を許されている場合の外は、地方公共団体の議会の議決は、訴訟の対象とすることはできないものである。(昭和二六年(オ)第二九〇号、同二十八年六月十二日最高裁判所判決参照)。それ故控訴人らの右訴は、不適法として却下すべきものである。
(大江 山下 猪俣)